成功報酬を取らない理由を語る日本の財務コンサル・インバンカーの思想

なぜインバンカーは成功報酬を取らないのか、ある協業先との会話で、改めて言語化できたこと

先日、とある士業の先生から協業のご提案をいただきました。

「根本さん、うちの顧問先で資金繰りに困ってる社長がいるんですよ。融資が通ったら成功報酬で5%いただく形でどうですか?」

ありがたい話です。 本当に。

でも、私はお断りしました。

「申し訳ないんですが、うちは成功報酬という形では受けてないんです」

先生は少し驚いた顔をされて、 「え、そうなんですか? でも融資が通ったら報酬が入る方が、根本さんも嬉しいんじゃないですか?」

…まぁ、そう思いますよね。

普通に考えたら、成功報酬の方が儲かるんです。 1億円の融資が通れば500万円。 月額顧問30万円だったら、17ヶ月分です。

でも、私はこの瞬間に、 「なぜ自分が成功報酬を取らないのか」を改めて言語化する機会をもらったんです。

 

本記事の内容

  • 成功報酬モデルがはらむ「構造的な歪み」
  • 銀行員時代に見た「ブローカー案件」の裏側
  • 顧問先との関係が壊れる瞬間
  • 月額定額にこだわる理由
  • この判断が、組織にもたらしているもの

本記事の信頼性

地方銀行で約10年、融資・審査・営業管理職を経験。 その後、完全歩合制の生命保険会社でMDRT4年連続入会。 「成功報酬で動く世界」も、「銀行の審査の裏側」も、両方見てきた人間です。

現在は株式会社インバンカーで、年間数百社以上の事業計画作成・財務顧問をしています。

 

成功報酬モデルがはらむ「構造的な歪み」

成功報酬って、一見すごく合理的なんですよ。

  • 融資が通らなかったら報酬ゼロ
  • 通ったら報酬発生
  • だから、コンサルも本気で動く

クライアントにとってもリスクが低いし、 コンサル側も結果にコミットせざるを得ない。

Win-Winじゃないですか。

…でも、本当にそうでしょうか?

私が銀行員時代に見てきた「成功報酬で動くブローカー」たちは、 確かに融資を通してました。

通してたんです。

でも、その後どうなったか。

銀行員時代に見た「ブローカー案件」の裏側

ある日、本部の審査担当だった私のところに、 地元の支店から稟議が上がってきました。

飲食店の運転資金。 希望額3,000万円。

事業計画書も添付されていて、 一見すると「ちゃんとした案件」に見えます。

でも、違和感があったんです。

計画書の数字が、やけに「銀行向け」なんですよ。 現場の匂いがしない。

で、稟議書の備考欄を見ると、 「◯◯コンサルティングの紹介案件」と書いてある。

…ああ、なるほどね、と。

結局その案件、融資は実行されました。 ブローカーには成功報酬が入ったでしょう。

でも、その1年後。

その飲食店、リスケ(返済猶予)に入りました。

計画通りに売上が伸びなかったんです。 そりゃそうです。 計画書が「銀行を通すための作文」だったんだから。

ブローカーはもういません。 成功報酬をもらった瞬間に、関係は終わってる。

残されたのは、 返済に苦しむ社長と、 貸し倒れリスクを抱えた銀行だけ。

これが、成功報酬モデルの構造的な歪みです。

「融資を通すこと」がゴールになる瞬間

成功報酬って、どうしても「融資を通すこと」がゴールになるんです。

通さないと報酬が入らないから。

だから、

  • 少しでも金額を大きくしたくなる(報酬が増えるから)
  • 本当は必要ない借入まで提案してしまう
  • 「通す」ことに最適化した事業計画書を作る
  • 融資実行後のフォローは二の次になる

これ、悪意があってやってるわけじゃないんですよ。

構造上、そうなるんです。

人間って、報酬設計に沿って動く生き物なんです。 どんなに誠実な人でも。

私自身、保険営業時代にそれを痛感しました。

年収3,000万円稼いでた頃、 私は「売ること」に最適化されてました。

お客様のためと思いながら、 でも心のどこかで「契約が欲しい」と思ってた。

この構造から抜け出したくて、 私はインバンカーを作ったんです。

協業先の先生に伝えた「本音」

その士業の先生に、私はこう伝えました。

「先生、成功報酬だと、 私たちは『融資を通すこと』にコミットすることになります。

でも、本当に大事なのは、 融資が通った”後”なんです。

その会社が、ちゃんと返済できる体質になっているか。 資金繰りが安定しているか。 次の一手が打てる状態になっているか。

それを見守るには、 融資実行後も、ずっと隣にいないといけない。

だから、うちは月額顧問なんです」

先生は少し黙って、 それから、こう言ってくれました。

「…なるほど、そういうことか。 じゃあ、顧問契約でお願いできますか?」

顧問先との関係が壊れる瞬間

成功報酬で動くと、 融資が通った瞬間に「関係の質」が変わるんです。

社長の中で、 「この人は、もう用が済んだ人」 になってしまう。

次に何か困ったときに、 もう一度連絡しようと思ってもらえない。

それって、悲しいじゃないですか。

私は、社長の隣にずっといたいんです。

資金繰りが苦しいとき。 銀行から厳しいこと言われたとき。 新しい挑戦をしようとしてるとき。

そのたびに、 「根本さん、ちょっと見てもらえますか?」 って連絡をもらえる関係でいたい。

それができるのは、 「融資を通すこと」で報酬をもらってないからです。

月額定額にこだわる理由

うちの顧問契約は、月額20万円〜です。

高いと思われるかもしれません。

でも、この金額には理由があります。

社長が、毎月「根本に払ってる」と意識する金額であること。

払ってると意識するから、 「元を取ろう」と思って連絡をくれる。

連絡をくれるから、 私たちは早い段階で問題に気づける。

問題に早く気づけるから、 手遅れになる前に手が打てる。

これが、成功報酬では絶対に生まれない関係性なんです。

「通す」より「守る」

私がやりたいのは、 融資を通すことじゃなくて、 会社を守ることなんです。

会社を守るには、 融資が必要なときもあるし、 逆に「今は借りない方がいい」ときもある。

成功報酬だと、 「借りない方がいい」とは言えないんですよ。 言ったら報酬ゼロだから。

でも、月額顧問なら言えます。

「社長、今は借りなくていいです。 手元資金で十分回せます」

これが言えることが、 私にとっては何より大事なんです。

この判断が、組織にもたらしているもの

インバンカーには、今、数名のコンサルタントがいます。

みんなに理解してもらいたいことがあります。

「融資を通した件数で評価しない」

評価するのは、

  • 顧問先との関係の質
  • 継続率
  • 顧問先が次のステージに進めているか

融資の成約件数を評価指標にした瞬間、 組織全体が「通すこと」に最適化されます。

私は、それを絶対に避けたい。

だから、報酬体系も、 評価制度も、 すべて「長く伴走すること」に最適化してます。

年収1,000万円を払うのも、 そのためです。

成果報酬で短期的に稼がせるんじゃなくて、 安定した給与で、長く顧問先と向き合える環境を作る。

それが、インバンカーという組織の土台です。

もし別の判断をしていたら

もし私が、 成功報酬モデルでインバンカーを作っていたら。

たぶん、もっと早く売上は伸びてたと思います。

1億円の融資 × 5% = 500万円。 それを月に2件決めれば、月商1,000万円です。

でも、きっと今頃、 私は疲れ果ててたと思います。

「次の案件」を追い続ける日々。 顧問先との関係は、融資実行で終わり。 また新しい社長を探して、提案して、通して、終わり。

それって、保険営業時代と同じじゃないですか。

あの頃の私は、年収3,000万円稼ぎながら、 どこか虚しかった。

同じことを、もう一度やりたくなかったんです。

この判断を、社員や経営者にどう使ってほしいか

もしあなたが、 財務コンサルや士業として独立を考えているなら。

報酬設計が、すべてを決めます。

成功報酬にすれば、 短期的には稼ぎやすいかもしれない。

でも、その先に待ってるのは、 「通すこと」に追われる日々です。

月額顧問にすれば、 最初は売上が伸びにくい。

でも、3年後、5年後に残るのは、 信頼と、長く続く関係です。

 

もしあなたが、 融資コンサルを探している社長なら。

成功報酬で動くコンサルに頼むのは、 否定しません。

でも、一つだけ確認してください。

「融資が通った後も、隣にいてくれますか?」

この質問に、 即答できないコンサルなら、 少し立ち止まった方がいいかもしれません。

まとめ

  • 成功報酬は、構造上「通すこと」がゴールになる
  • 銀行員時代、ブローカー案件の「その後」を見てきた
  • 融資実行後こそ、本当の勝負が始まる
  • 月額顧問だからこそ、「借りない方がいい」と言える
  • 報酬設計が、組織の文化を作る
  • インバンカーは、「長く伴走すること」に最適化している
 

今回は以上です。

協業先の先生との会話で、 改めて自分の判断軸を言語化できました。

これからも、 「融資を通す人」ではなく、「会社を守る人」でいたいと思います。

この記事の執筆者: 根本太一(株式会社インバンカー代表)

元銀行員×社外CFOとして、中小企業の資金調達・財務改善を支援。融資支援・事業計画策定・経営顧問まで幅広く対応しています。

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